③「男性上司が持つ女性部下に対するバイアス」を取り除く
ダイバーシティ推進のご担当者から度々お聞きするのが、「上司は良かれと思っていろいろ配慮するが、実はそれが女性部下の成長を妨げている」というお話です。たとえば皆さんの会社では、「きつく叱るのは(泣いてしまうかもしれないし)かわいそう」とか「女性には工場内の危険な仕事はさせられない」など、男性部下に対しては当然のように行うこと・指示することを、女性部下に対しては「気づかい」を理由に避けてしまう、といったことはありませんか? こうした「気づかい」につながる思い込みこそがバイアスです。そしてこのバイアスは、女性社員が成長するチャンスを奪ってしまいます。
このバイアスは、「パターナリズム(家父長主義)」と呼ばれるものです。これは、父と子の関係のように、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益になるようにと、本人の意志に反して行動に介入・干渉することを意味しています。
パターナリズムを解消するための有効な方法は、実は大変シンプルです。それは「本人の意思に反することがないよう、あらかじめ本人とコミュニケーションを取る」ということです。しかし、多くの企業においては上司が多忙であること、またパワハラ・セクハラへの恐れから女性社員とのコミュニケーションにしり込みする上司が多いことから、なかなか難しいようです。
従って、人材開発の面から男性上司に対してアプローチする際は、「女性部下が成長するために必要な経験は何か、上司として把握すること」「上司自身が自分たちの持つバイアスに気づくこと」「そのうえで女性部下との効果的なコミュニケーション法を習得すること」が重要です。ちなみに、サイコム・ブレインズでも男性上司向けの研修を実施していますが、毎回数名ほど、こうしたバイアスを持たず、コミュニケーション能力も高い男性が存在します。そういう方たちと話をしてみると、ほぼ例外なくフルタイム勤務の女性が自身の家族にいるか、複数の外国人部下をマネジメントした経験があります。バイアスは「自分事」として体験する中で解消されていく、ということでしょう。